前回は電装周りの工具や材料を紹介した。
今回はその続きとして電球の規格について紹介しようと思う。まずは第1弾としてハロゲンバルブの規格で、ヘッドライト周りは理解しておくに越したことは無い。
本来は工具の紹介シリーズだが工具ではなく素材や部品となってしまっているがご容赦いただきたい。
電球と言ってもかなり種類が多いので何回かに分ける事にしようと思う。
自動車用電球の大まかな種類
自動車用電球も現代では非常に多様化した。
ヘッドライト用は以前ハロゲンバルブが主流であったが現在の市販車ではHIDやLEDが主流になって来ている。
車の電球にはおおよそ次のような種類がある。
白熱電球
家庭用の白熱電球と同じ原理の電球。現在でもスモールライトやブレーキライト、ウィンカー等に使用される。
ハロゲン電球
主にヘッドライトに使用されて白熱電球よりも明るい。電球内部にハロゲンを含むガスが入っている。
HID
こちらもヘッドライトに使用される。キセノンガスを含むガスが入っており、ハロゲン電球よりも明るい。
LED
最近増えてきた。ヘッドライトやスモールライトそれにウィンカーや室内灯にも利用される。
電子素子である発光ダイオードにより発光する。低消費電力で長寿命。
電球の基本としてのハロゲンバルブ
ハロゲンバルブと言うとヘッドライトに用いられる電球で、基本的なモノとして把握しておく必要がある。
現在はヘッドライトにもHIDやLEDが用いられてきてはいるが、未だにハロゲンバルブは一番スタンダードな電球だ。
ハロゲンバルブは文字通り電球の中にハロゲンガスを仕込んでありフィラメントの温度を白熱電球よりも高く設定できる。
そのために明るくする事が出来る電球なのだ。
ハロゲンバルブが登場する前
ハロゲンバルブが登場する前はシールドビーム(Amazon)と呼ばれるヘッドライトユニットが主流だった。
このシールドビームは電球とリフレクターが一体となっていて電球のみの交換が出来なかった。
つまり電球が切れてしまうとヘッドライトのユニットごと交換するモノだった。
ハロゲンバルブが登場してから
ハロゲンバルブが登場し電球が交換できるようになったのは非常に画期的な出来事だった。
またワット数や色温度が選択できるようになったのはハロゲンバルブが登場してしばらくしてからだ。
ヘッドライト自体は元々規格品だった。
丸いモノ、四角いモノの両方ともサイズが決まっていたのだ。
ブランドとしてはマーシャル(猫の目のような光り方)やシビエ(カットが綺麗)のヘッドライトユニットが非常におしゃれで性能も高かったので手に入れては装着したものだ。
↑ マーシャルの722というヘッドライトユニット、現代ではH4のハロゲン球を使用する方式になっている、レンズに縦に筋が入っているので光ると猫の目のような模様が浮き出るのが特徴的、まだこうしたヘッドライトユニットは旧車や2輪用に販売されているようだ、画像はメーカーサイトより拝借
ハロゲンバルブの構造的規格
ハロゲンバルブの規格は口金部分とバルブ自体の形状の規格となっている。その中から良く使われるモノを挙げてみよう。
H1
4灯式ヘッドライトやフォグライト、H1ハロゲンバルブの例
↑ H1バルブの形状と口金、細長いスリムな形状のバルブだ、画像は小糸製作所サイトより拝借
H3
フォグライトやプロジェクターライト、H3ハロゲンバルブの例
↑ H3バルブの形状と口金、非常にコンパクトな形状をしているバルブ、奥行きの無いフォグ等に使用されることが多い、画像は小糸製作所サイトより拝借
H4
2灯式ヘッドライト(ハイロー切り替え式)、H4ハロゲンバルブの例
↑ H4バルブの形状と口金、2灯式のヘッドライトに使用される一般的なバルブ、2つのフィラメントが入っており別々に点灯する、同時に点灯する事を前提としていない設計だ、画像は小糸製作所サイトより拝借
H7
4灯式ヘッドライト、H7ハロゲンバルブの例
↑ H7バルブの形状と口金、4灯式のヘッドライトはこれが多い、画像は小糸製作所サイトより拝借
HB3
4灯式ヘッドライトのハイビーム、HB3ハロゲンバルブの例
↑ HB3バルブの形状と口金、曲がったコネクター部が特徴、画像は小糸製作所サイトより拝借
HB4
4灯式ヘッドライトのロービーム、HB4ハロゲンバルブの例(Amazon)
↑ HB4バルブの形状と口金、こちらも曲がったコネクター部が特徴、画像は小糸製作所サイトより拝借
ハロゲンバルブの電気的規格
ハロゲンバルブに限らず電球には電気的な規格がある、それは電圧と電力だ。
電圧と電力
H4のハロゲンバルブの例として12V、60/55Wとなっているとしよう。これは12Vの車に使用でき、ワット数がハイビームが60Wの電力、ロービームが55Wの電力となってますよという表記だ。
ご存じの通り大型車両やトラックでは24V電装の車もあるので12Vと表記されている訳だ。これを間違えてはいけない。
電力(ワット数)
次に明るさの1つの基準であるワット数だが、H4バルブの場合は1つの電球にハイビームとロービームのフィラメントが2つ入っている。それを切り替えながら使う構造になっている。
このためH4のみ60/55Wと表記されハイビームが60W、ロービームが50Wという意味なのだ。
ハロゲンバルブでは車検に適合する明るさが60/55Wという一つの目安となっている。もちろんこの数字は大きいほど明るくなる。
現在では規格上は60/55Wだが、明るさ上では100/90W相当という表記をしている場合もある(消費電力は同じでも明るい)。
ワット数とライティングハーネス
ハロゲンバルブの場合この消費電力は非常に重要で車自体が60/55Wとしてヘッドライトの回路が設計されている。
それより大きなワット数のハロゲンバルブを装着するとより大きな電流が回路に流れることになるのでヒューズが飛んだり発熱したりすることがあり危険なのだ。
そういう時にはヘッドライトの配線を太いモノに交換して大きな電流が流れても大丈夫なようにするライティングハーネスを導入することが一般的だった。
現在ではライティングハーネスの種類自体が減ってしまい探してもなかなか見つからない。
ノーマルのハロゲンバルブでもこうしたハーネスを使用する事により太い配線で電気抵抗を減らせるので多少は明るくなる。
これは補助灯でも同じで大きなワット数のハロゲンバルブを利用するならライティングハーネスを利用する。
光束と色温度
ヘッドライトの光には光束(ルーメン)と色温度(ケルビン)と光度(カンデラ)という数値がある。
ルーメンはルーメンは光の量でケルビンは光の色目、カンデラは光の強さと考えると分かり易いだろう。
全部が揃わないとヘッドライトとしての性能が無いという事になる。
もちろん車検でもチェックされるので要注意なのだ。
↑ 小糸製作所サイトから光束(ルーメン)と色温度(ケルビン)の説明の図、ルーメンは光の量でケルビンは光の色目と考えると分かり易い
色温度については管理人TomTomもいつの頃から登場したかハッキリわからない。
そのうちにハロゲンバルブの色温度が表記され出してノーマルバルブは3,000から4,000ケルビン程度だ。
これに対して6,000ケルビンや8,000ケルビンという色温度もある。
さらにHIDでは10,000ケルビンとかそれ以上のモノまである。
この色温度というのは好みの問題が多くを占めるが、見てくれだけで決めると雨の日に全く見えないことになるので注意した方が良い。
色温度が選択できない大昔、スキーに行くとかという場合はヘッドライトに黄色くて透明なカッティングシートを張り付けて黄色くした。
雪が降ると黄色い光のほうが乱反射が少なく視界が効くからだ。
現代では黄色いヘッドライトはNGなので真似をしないようにお願いします。
管理人の好みはハロゲンバルブだと5,000ケルビン前後がどのような天候の時でも一番見えやすいと思う。
↑ 色温度の違い、色温度が高くなると右のように白っぽく見える、さらに色温度が高くなると青く見える、あまり高すぎると悪天候時に見えにくくなるので要注意だ、画像は小糸製作所サイトより拝借
後付HIDキットの功罪
最近では元々ハロゲンバルブを装着して使用するヘッドライトに後付のHID装着キットが安価に市販されている。
ユーザーとしてはもっと明るく、もっと見えやすく、もっとカッコ良くという思いで交換する人も多いと思う。
この件に関して管理人TomTomの意見を書いておこうと思う。
前提となるのはH4のハイロー切り替え式のハロゲンバルブのヘッドライトをHID化する際の事だ。
発光点の問題
まず後付のHIDキットのHIDバルブとノーマルのハロゲンバルブの発光点がずれている場合がある。
発光点がずれるとリフレクターに当たった光は設計した方向に届かない。
結果、予期せぬ方向に光が漏れたり、ロービームではラインが綺麗に出ない時もある。
今まで試した後付HIDはいくつかあるが、いずれもこの点が満足しなかった。例えば信号で停止しているとヘッドライト上方に光が漏れて、はるか上のほうにある信号機を照らし出していたりする事もあった。
光の拡散の問題
ハロゲンバルブとHIDバルブの光の拡散が異なるようだ。
そのためハロゲンバルブ用に設計されたリフレクターやライト筐体では綺麗にロービームのラインが出ないとか焦点が合わないとか変なところに光が漏れるとかの問題がある。
これは発光点の問題と合わせてドライビング時に見にくい。
さらに対向車を初め周りの車も眩しいという事になる。
HIDバルブの熱の問題
HIDバルブは非常に高温となる。
この熱が想定されているハロゲンバルブの熱量を超えるようでリフレクターが黒く煤けてしまう事がある。
こうなるとリフレクターの本来の性能が発揮できないので明るくしようとして入れたHIDが無駄になってしまう。
さらにリフレクターやヘッドライト本体が溶けてしまうと、ヘッドライト全体を交換しなければならない事になり高くついてしまう。
HIDバルブ自体の耐久性の問題
後付HIDに使用されるHIDバルブの信頼性があまりよろしくない。
純正HIDでは5年やそれ以上は全く平気で使用できるのに、後付の安いHIDバルブはそうはいかない事が多い。
これは品質の問題だろう。
バルブの入手の容易性
これはあまり気にしなくても良いかもしれないが、ツーリングに出かけて夜間ヘッドライトのバルブが切れてしまい難儀した事がある。
最近のハロゲンバルブは耐振動性や耐久性に問題のあるものは少なく、まずこういった状況にはならない。
仮にそうなったとしても車のパーツ屋さんに飛び込めばハロゲンバルブは容易に入手できるだろう。
HIDバルブであれば、ある所にはあるがどこでもあるというモノでもないので困ることがあるかもしれない。
ハロゲンバルブの耐久性が悪い時には常に予備のハロゲンバルブを車に積んでおいたものだ。
最近ではこの必要性を全く感じない。
現代のハロゲンバルブは完成の域に達しているのではないだろうか。
結論として
管理人TomTomは純正ハロゲンヘッドライトに後付のHIDを入れるのはお勧めしない。
本来の道路を照らすという機能を見ただけでも全くお話にならない事が多いからだ。
特に中国製の安い後付HIDキットは止めておいた方が良い(以前よりは良くはなっているが)。
さらに後付のヘッドライトのLEDキットも発売されているが、これも同様の理由に加えてLEDの排熱性や光束の問題からお勧めしない。
特に排熱用のファンが振動や水が掛かり壊れることが多い。
↑ ホンダライフにH4タイプのHIDを入れて点灯したところ、これはロービームにしているのだが顔の高さから撮影しても明らかにビームが上側に漏れて眩しく見える、この原因はノーマルのハロゲンバルブと同様の発光点を再現できていない事に起因する、対向車にも眩しいだろうし自分でも光が拡散していて非常に見づらいのでお勧めしない
↑ 管理人TomTomが上記のホンダライフに取り付けたH4タイプのHID、発光点の設定やシェードの精度が悪く全くお話にならないライティング性能だった、さらに熱が凄くて画像ではバルブ自体も焦げているがリフレクターも焦げてしまった、上記画像はHIDバルブからハロゲンバルブに戻した後の画像
ハロゲンのヘッドライトを明るくするならハロゲンバルブを明るいモノに換え、前述のライティングハーネスを導入する方法をお勧めする。
車種別に使用されている電球を調べるならココ
ココまで説明したように自分の車の電球を変えるのに電球の種類と規格がある。
車種ごとに使われている電球が異なる、それを調べるには管理人TomTomもいつも使っている次のサイトが最適だ。
次回はHIDバルブ周りの事を紹介しようと思う
HIDバルブも結構種類があり、知っておいた方が良いと思う。
HIDについて構造とかバルブの種類とかを紹介する予定だ。
もうすでに工具ではなくなっているがご容赦のほどを。
今回はこのへんで
では