VWのEA189エンジン排ガス不正問題に思う:その3、ユーザーは数値に惑わされてはいないウソをついた事が問題なのだ

やっとココに来て自動車専門メディアからもVWのEA189エンジン排ガス不正問題に関する記事が出始めた。
VWロゴ

VW不正問題に関する自動車メディアの論調

少しずれた論調があるように思う。
というのは不正した綺麗な排ガスに対して通常走行時の排ガスのNOxの数値が40倍にもなるという部分だ。

ユーザーとしてはこの数値がどのように算出されてこうなっているか根拠が分からない。報道で目にしただけだ。
ましてやNOxの専門知識を持つユーザーは非常に少数だろうと思う。
ユーザーとしてこうした環境問題は避けては通れない時代とはなっているが技術の正確なところまで知っているユーザーはほんの一握りだと思うのだ。

メディアにはこうした40倍と言うような数値が独り歩きするのは調査を待たなければならないといった論調がある。
確かにこうした問題を語るには正確なデータが不可欠だろう。
自動車専門のメディアとしては当然の事だし、正確な数値を含めた情報を提供してほしいと思う。

しかしユーザーにとってのVW不正問題の問題点は全く別のところにある。
VWが確信犯として検査時に不正を働いたという事実だ。これは曲げようもない事実だ。
だからこそアメリカEPAが動き、ドイツ検察が動き、スイス政府が販売停止にしたのだろうと思う。
こうした事からVWが確信犯として各国や規格に関わるコンプライアンスを無視し、無理矢理検査に合格させたという事実が読み取れる。
ユーザーにとってはまさにここが問題なのだ。

数値に関する事はユーザーにはほとんど分からないし分かっちゃいない

NOxの数値が40倍になると言っても、それがどういう事なのかを正確に判断できるユーザーはほとんどいない。
もっと身近なJC08燃費モードのようなユーザーにとって非常に重要な数値であっても、検査値と実用上の数値がかい離するというのは経験上分かっている事だ。
それだけに検査時の数値と実際の使用時の数値が異なる事については特段問題無いと思う。実社会に良くある、そういう事もあるだろうという感覚だ。

重ねて言うが、問題は不正に検査に合格したという事実なのだ。
ユーザーは自動車メーカーが信頼に値するかどうかを見ている。
各国の法律や規則を確信犯として違反してまで検査を通す自動車メーカーの車を信頼できるかどうかということなのだ。
自分や家族の命を預けることになる自動車にはそうした信頼が求められるのは当然の事だ。

今回は排ガスの数値に関わる事だが他の事ならどうだろう。
例えばサスペンションアームの強度が不足しており、一定以上のGを掛けるとサスペンションアームが破損するという事があるとする。
こうした不具合を隠して検査に合格させてしまうような自動車メーカーの車に乗りたいのか?という事だ。
極端な例だが、ユーザーにとって排ガスでは即命に係わるという事は少ないが、上記のような事は即命にかかわるからだ。

便利な時代にはなったが経験則は生きている

様々なメディアが発達して一般人にとっても情報がより簡単に大量に集まるようになった。
自動車に関する情報に関しても同様だ。
ひと昔前は専門雑誌や書籍から得る知識や情報がほとんどすべてを占めていたのだが、現在はインターネットにとってかわられている。

ユーザーにとって車を購買する際の情報には2つの要素があると思う。

一つは経験則だ

あるメーカーの車に乗った事が基礎になり、それに自分で情報を追加したりして当該メーカーに対するイメージとなる。
例えば管理人TomTomのVWに対するイメージは次のようなモノだ。
・完成度の非常に高いキッチリした車を作る会社
・それなりのコストだが満足度が高い製品が多い
・基本的な品質は高いが細かいところのトラブルはままある
・性能の高い車は作れるがドライビングの面白さは無く感性に訴える点は少ない
・自分の嫁さんからは受けが悪い(女性にはピンと来ない事が多いようだ)

もう一つは外部から入ってくる情報だ。

ユーザーにはキチンと情報を仕分けしその情報が信頼して良いかどうかを吟味している。ユーザーも馬鹿じゃないのだ。
だからこそ新車を買う前の情報集めの段階では試乗記やユーザーの感想を読んで自分なりに消化し判断する。

VWグループに関するもう一つの疑問

管理人TomTomが今回のVWの排ガス不正問題で疑問に思う事がある。

報道が進むにしたがってVW本体だけではなく、アウディやスコダ等のVWグループ内の車にも問題となるソフトウェが採用されていたという事だ。
ブランドが異なるし会社も異なる、そこにチェック機能は働かなかったのだろうか?

もしVWから与えられたエンジンをそのまま検査もせずに各ブランドの車両に搭載していたとしたらこれは明らかに怠慢だろう。
せっかくVWのグループ内では別会社として独立採算を取っているのに形だけという事になりはしないだろうか。

こうした事を考えるとVWグループと言うのは一筋縄ではいかないグループなのだと感じる。
だからポルシェの社長がVWの会長になったのかもしれない。

VWは歴史があるだけに信頼回復はいばらの道となるだろう

管理人TomTomはすでに50代のオッサンだが親父が生きていた頃、VWのType1を買おうとしていた時期がある。
自分自身もゴルフ5に乗っていた時期があり、VWはきっちりとした車を作るなぁと感じていた。

何が言いたいかと言うと、親子や親子孫というような長いスパンでの顧客がVWには少なからず存在するという事だ。
こうした長年の刷り込みがありユーザーにとってのVWへのイメージが出来上がっているのだ。
このイメージが今回の件でガラガラと崩れ去り、信頼できる自動車メーカーの1つを失ってしまったとユーザーは感じていると思う。

果たしてそれをどうやって回復するのか?ココが問題だ。

まして今回のVWの排ガス不正問題は地球規模での経済問題となりつつある。
少し前にVWは日本の自動車メーカーであるスズキともめた。
いくらVWの車に好感を持っていてもこういう時には日本人としてナショナリズムが働いてVWのイメージは少し悪くなった。
さらに今回の件だ。

VWが無くなってしまうのはユーザーとして悲しい事だが、VWグループとしては別の代替となるイメージを作る方向になるのではないかと思う。
だからこそポルシェの社長が会長に就任したのではないかと思っている。

VWのEA189エンジン排ガス不正問題シリーズ記事

VW排ガス不正」というカテゴリーを作ったので見て下さい。

 

今回はこのへんで
では