ディーゼルスポーツカーはアリだろうか?「フォーカスST ディーゼル」と「A5 DTM selection」に注目してみる

フォードの「フォーカスST ディーゼル」は昨年に発表されていて2015年からデリバリーが開始されている。
フォーカスST自体はスポーティーな位置付けのモデルで過激なRSとノーマルモデルの中間的存在だ。
そんなスポーティー路線に走るディーゼルモデルはスポーツカーとしてどうなのだろうか?
新しく発表されているアウディ「A5 DTM selection」等も織り交ぜながら見てみよう。
フォーカスSTディーゼルのエンジン

ディーゼルエンジンの長所と短所

管理人TomTomの考える現在のディーゼルエンジンのイメージは次のような感じだ。

  • パワーは結構ある
  • トルクが凄い
  • レスポンスは一定の状況下では良い
  • 回転フィールはガソリンエンジンに全くかなわない
  • ガソリン車の回転計の数値を半分で割ったくらいの感覚
  • 燃費は素晴らしく良い

これらの点について感じている事を書いてみると。

パワーは結構ある

最近のディーゼルエンジンの発展は凄まじく、非常に良くなってきている。
これは次世代のエンジンとして自動車メーカーが位置付けてレース活動等でのフィードバックを行っている成果だろう。
パワーとトルクに関してはガソリンエンジンとそん色が無くなってきている。
特にトルクについてはガソリンエンジンの追従を許さない。

トルクが凄い

高トルクを発生するという事がディーゼルエンジンの最大の特徴だ。
それもアイドリングに毛が生えたような回転数から最大トルクをフラットに発生するようにしつけられている。
実用エンジンとしては非常に使いやすい性格になっているのだ。
ガソリンエンジンと異なり回さなくても走れるので日々実用車として乗るには扱いやすくなっている。

レスポンスは一定の状況下では良い

一定の条件下というのがミソだ。
確かにアクセルを入れた時のツキは大変良くなってきた。
つまり直線路で定速走行から加速を始めるような場合にはギアも変えなくても良いのでお手軽に加速が手に入る。
ワインディングへ持ち込むとアールの大きな中速から高速コーナーの連続では大丈夫だ。

問題はアクセルの頻繁なオン/オフの際のレスポンスだと思っている。
日本のワインディングに多い低速コーナーでのレスポンスが問題だろう。
ここがクリアできないと気持ち良く走れない。

回転フィールはガソリンエンジンに全くかなわない

ディーゼルエンジンはブン回すエンジンではない。
ドライバーの方も頭を切り替える必要がある。
これは最近のターボ付きエンジンにも共通する事で回せば気持ち良いとか速いとかという概念を捨てなければならない。
でもこれがなかなかできないのが現実だ。

最近のディーゼルエンジンは回転がスムーズになったとは言えガソリンエンジンにはかなわない。
かつてBMWの直列6気筒エンジンはシルキースムーズと言われていたがディーゼルエンジンでこうした表現はまだない。
ディーゼルエンジンの技術革新においてこれが克服される可能性はあると思うがしばらく先だろう。

ガソリン車の回転計の数値を半分で割ったくらいの感覚

さきほどドライバーの概念を変えないといけないという事を書いたがまさにこの事だ。
例えば、ガソリンエンジンで8,000回転までブン回して楽しむとすると、ディーゼルエンジンはこの半分で楽しまなければならない。

もっと具体的に考えると6,000回転くらいのパーシャルスロットル時に右足の微妙な調整で6,500回転にしたり5,500回転にしたり絶妙なアクセスコントロールをしながら走るだろう。
この6,000回転から6,500回転への500回転が絶妙な部分だ。

単純にこれをディーゼルエンジンに当てはめるとリミット8,000回転が半分の4,000回転になるとする。
ガソリンエンジンの6,000回転はディーゼルエンジンの3,000回転に当たる。
そしてガソリンエンジンのアクセルを踏み増した500回転がディーゼルエンジンでは250回転に当たるという訳だ。
こんな250回転なんて微妙なアクセルワークは現在のディーゼルエンジンでは難しい。

レブリミットに対する回転のスケールが単純にガソリンエンジンの半分のスケールとなってしまうのだ。
こうした絶妙なコントロールを受け付けられるようになればディーゼルエンジンはもっと楽しくなる可能性がある。

燃費は素晴らしく良い

ディーゼルエンジンの素晴らしいところは燃費が素晴らしい事だろう。
ブン回した時にこれがどうなるかと言えば未知数のところもあるがガソリンエンジンでも回せば落ち込むので同じだ。
スポーツドライビングが燃費良く行えるという事はドライバーにとってストレスが無いので良い事だ。
さらに航続距離が長く取れるというメリットもある。

管理人TomTomの考えるディーゼルエンジン

回転がスケールダウンしたとしてもドライバーが意のままにコントロールできる範囲を拡大する事が重要だ。
さらにディーゼルエンジンの回転フィールの問題は克服する必要がある。
どうしても回すとガサツな印象を持ってしまうからだ。
ドライバーはガサツな印象を持ってしまうと回す気が無くなってしまう。
ここはドライバーの感性として非常に重要なポイントだと思う。
これらが克服されたディーゼルエンジンはスポーツドライビングでも楽しいに違いない。

「フォーカスST ディーゼル」の内容

すでに現行のフォーカスSTが発表された際に「フォーカスST ディーゼル」を紹介したが改めて見てみよう。

「フォーカスST ディーゼル」のスペック

エンジン:2.0L TDCi ディーゼル
最高出力:185PS
最大トルク:400Nm/2,000rpm~2,750rpm
ミッション:6MT
駆動方式:FF
タイヤホイール:18インチ、オプションで19インチ
最高速度:217km/h
0-100km/h加速:8.1秒
燃費:4.2L/100km(23.8km/L Combined)

「フォーカスST EcoBoost」(ガソリン)のスペック

エンジン:2.0L EcoBoos ガソリン
最高出力:250PS
最大トルク:345Nm(オーバーブースト時360Nm)
ミッション:6MT
駆動方式:FF
タイヤホイール:18インチ、オプションで19インチ
最高速度:247km/h
0-100km/h加速:6.5秒
燃費:6.8L/100km(14.7km/L Combined)

トリムレベルはエンジンに関わらず共通でST-1/ST-2/ST-3の3種ある。
価格はUKにて417万円からの設定となっている。

「フォーカスST」の画像

改めて「フォーカスST」の画像を見てみよう。
フォーカスSTのフロント画像
↑ フォーカスSTのフロント画像、フォーカスSTはエンジンにかかわらず外観は同じだ、塊感のある素晴らしいデザインだがフォーカスも大柄になった、フロントは開口部が大きく迫力がある、画像はメーカーサイトより拝借

フォーカスSTのリア画像
↑ フォーカスSTのリア画像、ともすればスポーティーには見えない5ドアハッチバックをスポーティーに仕上げることに成功している、リアはセンター2本出しのマフラーが印象的、画像はメーカーサイトより拝借

フォーカスSTのインパネ画像
↑ フォーカスSTのインパネ画像、フォードのインパネは少しゴチャゴチャした印象があるのが特徴、ダッシュ上の3連メーターが伝統だ、ペダルが面白い意匠になっている、画像はメーカーサイトより拝借

フォーカスSTのフロントホイール画像
↑ フォーカスSTのフロントホイール画像、標準で18インチ オプションで19インチを履く、ディーゼルモデルで懸念されるのはエンジンが重たいので重量配分が前寄りになってしまう事だ、これもどう解決しているのか興味がある、画像はメーカーサイトより拝借

フォーカスSTのフロントサスペンション構造画像
↑ フォーカスSTのフロントサスペンション構造、かなりしっかりとした作りとなっている、ハブキャリアのアップライトが太くて剛性ありそう、現代では常識のドライブシャフト左右等長だが左右で少し長さが異なる、画像はメーカーサイトより拝借

スペックを見るとガソリンモデルとの差がかなり大きく感じるがディーゼルモデルのトルクが素晴らしい。
「フォーカスST ディーゼル」はどうやらヨーロッパ専用モデルのようでアメリカでは発売されていない。
一度ドライビングしてみたいディーゼル車だ。

アウディー「A5 DTM selection」の内容

一方VW排ガス不正事件の渦中にあるアウディからもスポーティーなディーゼルモデルが限定車として登場している。
「A5 DTM selection」は大柄なクーペだがDTMからのインスピレーションにより各部をドレスアップしたモデルだ。

「A5 DTM selection」のスペック

エンジン:3.0L TDI ディーゼル
最高出力:245hp
最大トルク:580Nm
ミッション:7速Sトロニック
駆動方式:quattoro(4WD)
タイヤホイール:265/30R20、9J×20
0-100km/h加速:5.9秒
最高速度:250km/h
燃費:6.3L/100km(15.9km/L)
価格:74,540ユーロ(約995万円)、限定50台

「A5 DTM selection」の画像

「A5 DTM selection」はどちらかと言うと限定車としての性格が強くそのための演出が多数施されている所が注目だ。
「A5 DTM selection」のフロント画像
↑ 「A5 DTM selection」のフロント画像、外観は標準のA5とそれほど変わらないように見える、画像はメーカーサイトより拝借

「A5 DTM selection」のサイド画像
↑ 「A5 DTM selection」のサイド画像、端正なシルエットを持つA5シンプルで綺麗、タイヤホイールは265/30R20という大径で極太、馬力は大したことは無いが強大なトルクを受け止めるにはこれくらいのタイヤが必要なのだろうか、画像はメーカーサイトより拝借

「A5 DTM selection」のリア画像
↑ 「A5 DTM selection」のリア画像、リアも非常にシンプル、大きなスポイラーのような空力付加物も付かない、大人のためのクーペと言う感じ、画像はメーカーサイトより拝借

「A5 DTM selection」のドア開けたところ画像
↑ 「A5 DTM selection」のドア開けたところ画像、ドアを開けるとDTMの文字がライティングされるギミック付き、チラッと見える内装は赤がモチーフになっている、画像はメーカーサイトより拝借

「A5 DTM selection」のシートバック画像
↑ 「A5 DTM selection」のシートバック画像、シートのバックはハードシェルで赤く塗られていて非常にレーシーだ、残念ながらこのままでは日本の車検に適合しない、画像はメーカーサイトより拝借

「A5 DTM selection」は台数も少なく日本にも入ってこないだろうが、ことさらディーゼルを前面に押し出したモデルでもない。
ごく普通にディーゼルエンジンを積んでいるのが興味深いところ。
VWグループとしてはディーゼルエンジンをどのように扱っていくかが今後の問題点だとは思うが素晴らしい可能性を秘めた演じである事には違いない。

何年か後にはディーゼルエンジンのスポーツカーがわんさか登場してるかも?

自動車メーカーの動きを見ているとヨーロッパ勢は今後はディーゼルが中心になりそうな雰囲気はある。
しかしVW排ガス不正事件もあり政治的な逆風が吹いているのは事実だ。
技術面ではディーゼルエンジンは進歩が著しく素晴らしいパフォーマンスを獲得した。
次なる段階はガソリンエンジンが積み上げてきた人間の感性の部分をどうするかだ。

カーンと回して気分の良いガソリンエンジンに対して、グビっと踏めば爽快なディーゼルエンジンとなるだろうか。

今回はこのへんで
では