以前車の内部のネットワークはイーサネットになりつつあり「1000BASE-T1」が有力だと書いた。
しかし最近ではこれに対抗しようという別陣営の動きもある。
それは元々AV機器向けの規格「HDBaseT」なのだ。
業界のデファクトスタンダードの位置を狙って席取り合戦が始まっているのだ。
より高速化が望まれる車内LAN
車内のネットワークは長らくCANバスと呼ばれるネットワークが主流となっていた。
ここにきてより高速、大容量、遅延が少ないネットワークが求められている。
それは動画をネットワーク上に流す必要が出て来たからだ。
動画はルームミラーや俯瞰カメラ、それに日本でも今年認可される見込みのサイドミラー等々がある。
こうした動画は遅延があると当然ドライバーが運転しずらく危険だ。
だから高速なネットワークが要求されるのだ。
さらに自動運転を視野に入れるとセンシングの量が増えデータもより細分化されて伝送量が多くなっている。
車内ネットワーク上を走るデータがより多くなり遅延の少ないネットワークを求めているのだ。
↑ 「HDBaseT」の団体HDBT、主要メンバー、主に家電メーカーだがGMが入っているのが興味深い、全加盟100社ほどあり会員ランクがある
「HDBaseT」はなんと6Gbps/sのスピードなのだ
以前紹介した「1000BASE-T1」は1Gbps/sのスピードだった。
これでも家庭のネットワークと同等か速いくらいだ。
しかし今回紹介する「HDBaseT」は1対のツイストペア線で6Gbps/sの伝送スピードが出る(15mの距離の場合)。
さらにイーサネットには昔から通信線に電力を乗せる技術があるが今回の「HDBaseT」もその機能がある。
そして遅延も非常に少なく車内ネットワークにピッタリの性格なのだ。
元々「HDBaseT」はAV機器を接続するために開発されたので画像や動画の伝送はお手の物だ。
前述のように電力も同じ物理ケーブルで供給できることでシンプルなワイヤリングで済むので実装が楽になる。
↑ 「HDBaseT」の利用概念図、コレを見れば元々AV機器用のネットワーク規格という事が良く分かる、特に映像系に強く高速なのが特徴だ
車内ネットワークのデファクトスタンダードの席取り合戦
しばらくは車内ネットワークのデファクトスタンダードに関しての席取り合戦が続くだろう。
ビジネス的にはデファクトスタンダードに採用されるとその陣営は規格はもちろんの事、対応するハードウェアの供給やライセンスで大いに潤う事になる。
これはビッグビジネスなのだ。
車に関する規格争いでは充電方式の「CHAdeMO」方式とコンボ方式の例があり世界中で2方式で走ってしまっているのが現状なのだ。
巨額の利益が見込めるだけに土俵に上がったプレイヤーとそれを後押しする国によりなかなか決着は付きそうにもない。
↑ 「HDBaseT」のバージョン1と2の概念図、バージョンが2.0に上がる事でより広範囲な機能を持つネットワークとなってきているのが分かる、こうなると伝送方式ではなくプロトコルといった感じだ
車がどんどんIT化していく
管理人TomTomはこうした車がどんどんIT化していくのはテクノロジーが進歩するという新しいモノ好きの観点から言えば大変興味深い。
一方車好きの1エンスーとして見てみると機械的な動作をする車に対して執着があるのだった。
良く出来たギアボックスのギアの噛み合う感触やステアリングを切り込むときのヌメっとした感触、アクセルをガバっと踏み込んだ際のエンジンのツキと言った車と人間との接点の部分は機械的なものが好きだ。
車がテレビゲームのようになってしまうのが嫌なのだ。
これからの時代は実用車はITの塊となり、趣味車は機械式となって残るのかもしれない。
エライ時代になったモノだと実感する。
今回はこのへんで
では