トヨタ「ミライ」は意外とコンサバな車だが壮大なエネルギー戦略が見え隠れ

最近トヨタのFCV(燃料電池車)である「ミライ」の露出が多く、いたるところに登場している。

トヨタ「ミライ」の未来は?

トヨタ「ミライ」フロント画像、確かに外観は近未来的だ、すぐに違和感を感じなくなるのだろうか、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」フロント画像、確かに外観は近未来的だ、すぐに違和感を感じなくなるのだろうか、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」リア画像、後からの画像だとそれほど違和感を感じないが全体に分厚い、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」リア画像、後からの画像だとそれほど違和感を感じないが全体に分厚い、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」サイド画像、前後が分厚く船のようだキャラクターラインはゆったりとしたものでこの車の性格に合っている、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」サイド画像、前後が分厚く船のようだキャラクターラインはゆったりとしたものでこの車の性格に合っている、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」カラーバリエーション画像、車体色は流行のツートーンが標準となっているようだ、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」カラーバリエーション画像、車体色は流行のツートーンが標準となっているようだ、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」サイド画像、インパネは近未来感は感じさせないデザインに懲りすぎてゴチャゴチャした印象だ、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」インパネ画像、インパネは近未来感は感じさせないデザインに懲りすぎてゴチャゴチャした印象だ、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」シート画像、シートのデザインは素晴らしい座り心地が良さそうでそれでいて今までに無かった形をしている、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」シート画像、シートのデザインは素晴らしい座り心地が良さそうでそれでいて今までに無かった形をしている、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」ナビ画像、なんと専用ナビは販売店オプションで一般の車と同じ扱い大丈夫なのか、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」ナビ画像、なんと専用ナビは販売店オプションで一般の車と同じ扱い大丈夫なのか、画像はメーカーサイトより拝借

新城ラリーでは00カーとしてラリーコースを走ってみたり、今まででは考えられない趣向もある。
しかし文字通り未来の車社会を決定付けるかもしれないこの車、本質はどこにあるのだろうと考え直してみた。

まず現在選択できる化石燃料を使う内燃機関以外の車としては何があるのか?ということだ。実はHVのように内燃機関と組み合わせない純粋なパワープラントとしてはほとんど選択肢が無いのだ。
HVの分野では内燃機関+電気、内燃機関+空気圧等が実用化または実験されている。一般にHV(ハイブリッド)と呼んでいるモノは内燃機関+電気の組み合わせだ。既にこの組み合わせは枯れた技術となりつつある。現在ではこの組み合わせのコストダウンを図る普及期に入っている。さらに内燃機関と他の組み合わせが現れる可能性もある。

内燃機関を除いて車のパワープラントとして見れば、現在のところ燃料電池という選択肢が一番有力であった。燃料電池と言えば、映画の世界で豆粒ほどの物体が大きな都会の発電量を賄ってしまうという未来的な刷り込みがある。実際にはこんなことは今のところないのだが期待の大きさを表すモノの一つだろう。

現在のEVの弱点

一方EVは日産リーフや三菱i-MiEVが先鞭を付けた分野だが航続距離の問題があり踏み切れない人も多いのではないだろうか。実はEVは結構昔から身近にありゴルフ場のカートやフォークリフト等も電動のものが数多く使われてきた。このEVにおける最大の問題点は航続距離であるのは間違いない。単純に言えば電池の性能が上がれば航続距離も伸びるし電力の保存も効くようになる。そして電気を使う方も随分と省エネになって消費電力が劇的に減ってきているし、なるべく電力を使わない他の方式も考え出されている。
それにEVには温度の問題がある。ハンディカムを寒いところ、例えばスキー場とかで使用すると気温が低いために録画できる時間がずいぶん減ってしまうような事を皆さんも体験しているのではなかろうか。こうした寒冷な条件での電池性能も大きな問題点なのだ。寒い地域での航続距離が短くなる、寒い地域は雪が降る、となると車スリップし人間はヒーターをかけないといけない。電力を大いに消費する条件が揃っているのだ。
また充電時間は急速充電の発達により随分と充電時間が短くなったがそれでもまだ30分もかかり満充電にはならない。現在のガソリンや軽油を給油する感覚とは大きくかけ離れているのだ。

FCVのメリットとデメリット

現在のところこうした問題を解決する可能性があるのがFCVである。ただし問題点は山積なのだ。
まず安全性だがトヨタは新城ラリーの00カーとして「ミライ」を使うことにより安全性をアピールした。ラリーでは未舗装の林道を多く走るのでこうしたデリケートな車で走れるということがユーザーの安心感に繋がる、いかにも上手いアピール方法だと思う。
次に車両価格だが、これは時間と車両の売れ行き次第で解決できる問題だろう。現在でもトヨタは「ミライ」の価格として7,236,000円(税込)という価格付けを行っているが、現在の状況を考えると大変破格な値付けだと思う。さらにこれにエコカー減税+自動車グリーン税制+CEV補助金があり政府が2,252,900円の後押しをするので実質は4,983,100円のユーザー負担となる。これなら多少無理をすれば買えそうな価格だ。
最後にインフラの問題だ。ここにもトヨタの戦略があり「ミライ」の発売を予定よりも前倒しした。つまり水素ステーションはほとんど無いのに先にFCVである「ミライ」が発売されてしまうのだ。ここで慌てた政府は水素ステーションの整備を急ピッチで進めるという事になった。もちろんトヨタ「ミライ」の後にはホンダのFCVも発売を控えている。

個人的にはFCVの利点はいくつかあると感じている。
まず航続距離が取れる事、ただしインフラの整備を待つ必要がある。ガソリンみたいに携行缶なんて無いのだ(法律上は禁止だが)。
次に給油というか水素の充填時間が短くて済む、現在のところ約3分ほどだそうだ。EVの急速充電の30分よりもガソリンを給油する感覚に近い。これなら実用上問題無いだろう。
そして最後に排出する物質が水しかないという事だ。車に対する今までの感覚では水しか出ない車なんて信じられないというか新感覚なのだ。水素を作る部分は別として、環境に対してのダメージとして自分がまき散らす部分では最高の環境性能だと思う。

FCVは前述したような特徴を持つが、将来的にはもっと異なる意味を持つだろう。近年電力の自由化が進み工場等は自前で発電する仕組みが普及している。装置としてはコジェネレーション等と呼ばれているモノだ。これの個人版が出現することになる。EVでも付加価値として家庭の電力を賄うという仕組みがあるが、こちらは元々電力を利用して充電を行わないといけないので基本的な考え方が異なる。
つまり家庭でも外部からの電気の供給が不要になるということだ。これは太陽光発電でも同じことが言える。現在では、例えば太陽光発電で完全に家庭での消費電力を賄える訳では無いが、燃料電池であれば水素を供給できればこうした可能性が広がる。FCVは一家に一台の電力インフラになる可能性があるということだ。
ただFCVは車なので所要で走って行ってしまうと家庭に電力を供給できない。従ってやはり通常の電力供給を受けないと成り立たない。もう少し視野を広げて考えるとFCVは車として移動できるのでモバイル発電所と捉えることもできる訳だ。

トヨタ「ミライ」お家へ電力供給の図、あまり詳しく書かれていないがEVとは比較にならないインパクトを電力業界に与える可能性がある、画像はメーカーサイトより拝借
トヨタ「ミライ」お家へ電力供給の図、あまり詳しく書かれていないがEVとは比較にならないインパクトを電力業界に与える可能性がある、画像はメーカーサイトより拝借

 

こうして改めてFCVを見てみると電力の供給と消費の仕方を変える大いなる可能性がある。5年先や10年先はいったいどのような状況になっているのだろう。我々の生活はどうなっているのだろう、想像するだけでも楽しいではないか。だから車名が「ミライ」なのだ。

今回はこのへんで

では