ホンダS660に思う、軽自動車だと思ってはいけない

所用のついでにホンダのディーラーに寄って軽スポーツカーS660のカタログをもらってきた。

S660のディーラーでの扱いは比較的冷静だった

立寄ったホンダのディーラーは何度かお邪魔した事のあるところだ。
入口にはさっそくS660の納期についての掲示がされていて今年年内にS660を手に入れようとすればすぐに発注を掛けないと間に合わないとの記載があった。
確かにホンダのサイトでもS660の納期に付いてのアナウンスがあり、今からだと2015年7月以降の工場出荷になるとある。
果たしてそれだけ売れているのだろうか、個人的には少し疑問が残る。
S660の一番の特徴リアボンネット部分
↑ S660の一番の特徴リアボンネット部分、小さいくせになかなか凝った意匠を見せる、少し凝り過ぎかもしれないが思い切ったデザインでスポーツカーとして非日常性をプンプンさせているところが憎いところ、画像はメーカーサイトより拝借

S660はディーラーでは全く事前情報無し

ディーラーの営業マンによると最近のホンダは新車発表前のディーラーに対する実車を用いた勉強会のような事はしないのだそうだ。
このホンダの傾向はマツダと正反対の対応だ。
マツダはこうした事前勉強会にて新型車の乗り味とかをその人なりに伝えてくれるのだ。
ディーラー店頭に実車の無い車を見たこともない人が説明するというのが無理なお話だと思う。
S660フロント部分
↑ S660フロント部分、フロントは比較的アッサリしたデザインだ、前から見るとあまり違和感が無い、画像はメーカーサイトより拝借

S660のサイド
↑ S660のサイド、凝ったディティールを持ったサイド、エアのアウトレットやインレットが面白い、よくもこの大きさにこれだけ詰め込んだものだ、画像はメーカーサイトより拝借

S660は軽自動車だと思っていはいけない

カタログを眺めていたりメディアの記事を見ているとS660はかなり特別な軽自動車でありスポーツカーのように感じる。
まず、外観が今までになくアグレッシブと言うか独特だ。
これは人によってハッキリと好き嫌いが分かれてしまうだろう。
前は良いとしても後ろから見てエンジンフード上の2つの盛り上がりが個性を主張している。
個人的にはこの外観はありだと思うが、後述する荷物積載性で二の足を踏んでしまう。

次に車自体が非常にハードコアというかスポーツに振ったシャーシを持っている事だ。
これは歴代のType-RやS2000等に乗れば良く分かる。
個人的には最近はEK9のType-Rに触れることが多いのだが、このEK9は非常に良く考えられているしType-Rのバッチは伊達ではないと思う。
その他のType-Rにしても非常にハードなスポーツ性を探求した車であるというバックボーンをしっかり持っていて、それなりにドライビングしないといけない車だ。
またType-Rとは成り立ちが異なるがS2000にしてもオープン2シーターの流麗な外観とは似合わずハードコアな車だと思う。
各所にこだわりの良いモノ感と走りのハードコアな部分が同居している車だ。

その流れを汲むS660は軽自動車だが随所にこだわりが見えて面白いスポーツカーに仕上がっていると思う。
こうしたS660は軽自動車枠に収めるように企画されたスポーツカーなのだが、軽自動車としての乗り味を追求したのではない。
つまりホンダのS2000の流れとしてのSシリーズとしての乗り味と各部へのこだわりのあるスポーツカーとなっていると思う。
従ってユーザーとしてもこのS660を軽自動車という枠で見つめるといけない、ホンダのSシリーズの車と言う見方をしないと正当な評価ができないと思うのだ。
S660のリア部分
↑ S660のリア部分、リアは非常に特徴的だ、ある意味乗るのに勇気のいる外観だ、リアバンパー下が大層なデフューザー形状となっているのが車のサイズとの対比で面白い、画像はメーカーサイトより拝借

S660を小さく作ろうとしたがために切り捨てた部分

マツダのNDロードスターもそうだが、日本国内では軽くて小さくて気持ちの良いスポーツカーを作るという所に車作りが回帰している。
S660も小さい=軽自動車枠で作るという条件を付けたものだから捨てたものも多い。

個人的に気になるのは荷物の積載スペースだ。
2名で1泊程度の荷物を積み込んでツーリングに出かけるという場面が全く想定されていないのには驚きだ。
個人的にはこれはスポーツカーとしてもマストの条件だと思っているのでどういったスポーツカーとしての使い方を想定しているのか想像が付かない。
一方比較対象になるかどうか分からないがマツダのNDロードスターでは同じオープンボディーだが一応トランクがあるので2名で1泊程度のツーリングはこなせる。
S660のフロント収納スペース
↑ S660のフロント収納スペース、本来はロールトップを外した際に収納する場所だが多少の荷物なら収納できそう、2人で1泊分の荷物は無理そうだ、画像はメーカーサイトより拝借

S660のアジャイルハンドリングアシスト

ピュアなスポーツカーなので曲がるための電子デバイスは搭載しないだろうと思っていた。
しかし蓋を開けてみるとアジャイルハンドリングアシストなる曲がるための電子デバイスが装備されている。
すでにレジェンドに採用されているこのシステムはカタログによると、

ドライバーがステアリングを切り始めた時、車速や操舵量などからヨーレートを予測し介入が必要だと判断すると、内輪にわずかにブレーキをかけ車両が応答遅れなく曲がるようにアシスト。また、ステアリングを切った状態から直進に戻す際には、反対側のブレーキを作動させることでそれまでのヨーレートを打ち消す力が発生し、車の姿勢を素早く安定させる。

とある。
この種のブレーキをつまむ電子デバイスは他にも結構ある。
アンダーステアを打ち消したり、逆にオーバーステアを是正したりするためだ。
左右トルクを電子的にデフで配分するシステムよりも自然に受け入れられるかもしれない。
コーナリングの初期ではアンダーステアの抑制、またコーナリングの終わりにはオーバーステアの抑制に役立つだろう。

そう、この車はミッドシップスポーツカーなのだ。
きちんと荷重移動ができなかったりパワーの掛け方がラフでも安全に走れるようになっている。
こういった事情からリアのタイヤがフロントに比較してかなり太いのは理解できるのだ。

またコーナー内側の駆動輪のブレーキをつまむということは条件が合えばLSD効果も発揮するだろう。
S660のアジャイルハンドリングアシスト
↑ S660のアジャイルハンドリングアシストの動作解説、本来は人間がやらねばならない荷重移動やらアクセルコントロールやらを多少サボっても大丈夫なシステムのようだ、コーナー出口ではアクセル踏んでLSD効果もあると思う、画像はメーカーサイトより拝借

ホンダのSシリーズはオープンだけなのか

ホンダのSシリーズにおける哲学がどんなモノかはハッキリと知らないがオープンボディーのみを対象としているのだろうか。
個人的にはオープンボディーに拘るのが分からない(Type-Rとの関係か?)。
このS660についてもタルガトップではなくて通常のクローズドボディーがあれば非常に気に入ってしまうかもしれない。
これはNDロードスターでも同様だ。
S660のオプションのレッドロールトップ
↑ S660のオプションのレッドロールトップ、速くないのであればおしゃれに楽しむのも良いと思う、この赤はまずまずだが好みの色がオーダーできるなら良いかもしれない、画像はメーカーサイトより拝借

速くなくても気持ち良い車でカッコ良い自分専用車が欲しい人にはピッタリ

車は不思議なもので速くなくても気持ちの良い車が多数存在する。
気持ちが良いのと絶対的に速いのは別問題なのだ。
気持ちの良いスポーツカーが欲しい、個性がある車が欲しい、所有しても満足感がある車が欲しい、一人で乗ることがほとんどで実用性は問わない、パワーが無くても問題なし、そして維持費が安いという条件をクリアすればS660は買いだろう。
これなら家族が乗ることを想定して2ペダルにこだわる必要もないし荷物が載らなくても良い。
まして軽自動車なので維持費は少なくて済むのだ。
S660は速くなくても気持ち良い車でカッコ良い自分専用車が欲しい人にはピッタリなのだ。
個人的にはこうした事を考えると非常に迷うところで、誰かに背中を押してもらえると買ってしまうかもしれない魔物のような車だ。
正式発売前に3000台も受注しているところを見れば背中を押す人と押された人が多いのだろう。

今回はこのへんで
では